聖らかに、甘く、やわらかく立ち上る高音。

「記憶を失っている間、ずっと伝統のやりかたを守っていた。だから、僕は、流行に踊らされずに、僕の音をまもることができたんだと思うよ」

Bluethner

誕生日/1853年11月18日 身長/166cm

好きな食べ物/ラスク、ヴルスト全般、ビール

 


 

 創業以来ライプツィヒでピアノを作り続けている、ベヒシュタインスタインウェイと同い年のメーカー。「シンギングトーン」と呼ばれる、字義通り歌うような音色で世界的に知られている。かつては欧州最大の生産台数を誇ったこともあったが、第二次大戦で著しい被害を受け、復興後には東独によって国有化されるなど過酷な運命を辿った。現在は創業一族の手に戻り、電子ピアノも作る先進的なメーカーとなっている。

 

 丁寧に作られたアップライトピアノの評価が高いためか、フラッグシップモデルのフルコンサートグランドピアノから想像される体格はシンメルとほぼ同等と想像されるものの、ブリュートナーの姿は十代中盤の少年のそれである。成長期の細く長い手足、よく鍛えられた声帯は変声期でもバランスを欠かず美しいアルトを奏で、金髪の巻き毛と強く美しい目許は、言葉を失うほど美しい。聖トーマス教会少年聖歌隊の制服がよく似合う美少年だ。かつては欧州じゅうの少年聖歌隊の制服を所有し、時折混ざり込んで聖らかな歌声を披露していたという。

 

 見た目からは想像もつかないほどしたたかで、その美声からは想像もつかないほど歯に衣着せぬ真っ直ぐな発言をする。必要とされるときには、攻勢のヤマハとすら対等以上の振る舞いをするだろう。

 

・アリコート弦という、四本目の弦を高音部に張る製法で特許を取っていた。打鍵しない共鳴専用の弦を高音部に持つことにより、より豊かでまろやかな響きを作り出すことができる。

 

・電子ピアノにも幅広いラインナップを持ち、上位モデルは響板スピーカーや木鍵盤に精密なピアノアクションなど、力を入れて開発されている。海外展開にも積極的で、欧米のみならずアジア圏にも複数の拠点を持つ。

 

・1972年から1990年までは東独によって国有化されていたが、その頃の記憶はないという。当時国によって打たれた国章の焼印の痕は、今でも腹部に残っている。

 

・今世紀に入り、同じライプツィヒのメーカーでラフマニノフゆかりの「レーニッシュ」を救済した。庭先に工場用地を与えて製造を続けさせている。